知床観光船事故を考える:観光船の「運航基準」とは?

日本のニュース

読売新聞オンラインさんに「知床観光船、しけ予想の中で運航基準守らず出航強行か」が掲載されていました。

観光船の「運航基準」が気になりましたので、今日はこちらについて調べたいと思います。

船の「運航基準」とは

読売新聞オンラインの記事を読みますと、運航基準については次のような記述があります。

13人以上の客を乗せる遊覧船の運航事業者は海上運送法に基づき、国から許可を得た上で、事業開始日までに、風の強さや波の高さなど出港の是非を判断する運航基準を盛り込んだ「安全管理規程」を作成し、国に提出する義務がある」(太字は筆者による)

ちなみに、国土交通省によると旅客船とは「12人を超える旅客定員を有する船舶」をさすとのことなので観光船はこちらにカウントされると思われます。

運航基準は各事業者が決める

運航基準は国が定めたものではなく、各事業者の安全管理規定によるのですね。

これは意外といえば意外でした。

風速や波浪によってきっちり決まっているものと思っていました。

とはいえ、事業者がテキトーな安全管理規定を出して全部通るというわけはありません。

提出した安全管理規定を国交省が審査し認定書を交付

国土交通省の船舶安全管理認定書等交付規則によりますと、この「安全管理規定」を国に提出してから審査があります。

その審査に通ると…つまり安全に運航できると判断されると、「船舶安全管理認定書又は適合認定書」が交付されます。

安全管理認定書の有効期限

交付された「安全管理認定書」の有効期間は5年

意外と長いんだなという印象ですが、いかがでしょう。

5年の間に、安全管理規定に反した運航があった場合はどうするのか??

安全管理認定書の失効

前述の国土交通省によれば「第三条第三項(第七号を除く。)の要件に適合しなくなったとき」に安全管理認定書等は失効するとあります。

第三条第三項とは、以下の通りです。

  • 一   安全及び環境保護の方針を確立していること。
  • 二   船舶の安全運航及び環境保護を確実にするための手順及び指示に関する事項を明確にしていること。
  • 三   安全管理システムに係る組織内の権限及び情報伝達経路(指揮命令系統)を明確にした定義を有していること。
  • 四   事故及び船舶安全管理規程に対する不適合に係る報告手順が確立されていること。
  • 五   緊急事態に対する準備及び対応の手順が確立されていること。
  • 六   内部監査及び管理の見直しの手順が確立されていること。
  • 七   船舶安全管理規程が第二条に規定する船舶の種類ごとに三月以上適切に運用された実績があること。ただし、初期審査を受ける場合に限る。
  • 八   前各号に掲げるもののほか、国際安全管理規則において文書化しなければならないこととされている事項が明確にされていること。

知床の水難事故に照らし合わせますと、五や六はきちんとしていたのだろうか…という疑問が浮かびますが、現段階では推測にすぎませんので今後の調査を待つべきと思います。

知床観光船の運航基準

では、知床観光船の運航基準は具体的にはどのようなものだったのでしょうか。

読売新聞オンラインによりますと、別の観光船業者が複数、次のように語っているとのことです。

「風速8メートル、波の高さ1メートルを超えることが予想される場合には出港を取りやめると定めており、知床遊覧船も同じはずだ」

読売新聞オンライン

知床の観光船の業者さんたちは「風速8メートル、波の高さ1メートルを超えるのが予想できるときは出航しない」という運航基準を定めていたのですね。

では、当日の風速と波の高さはどうだったのでしょうか。

当日の風速

「カズワンが発着するウトロ漁港周辺では日中、秒速15メートル前後の風が吹いていた」(読売新聞オンライン)とされます。

運航基準の倍に近い風速です。

当日の波の高さ

「カズワンが出港した午前10時の約20分前には波浪注意報を出していた」(読売新聞オンライン)とあります。

出航時刻前に波浪注意報が出ていたことはこれまで複数のニュース↓でも言われていました。

北海道の波浪注意報の発令基準

北海道の波浪注意報の発表基準を調べますと、オホーツク海で3メートルを超える波浪が予想されるときに波浪注意報が発表されるとのことでした。

前述の通り、知床の観光船の業者さんたちは「風速8メートル、波の高さ1メートルを超えるのが予想できるときは出航しない」という運航基準を定めていました。

波浪注意報が出ているのがわかっていて運航した場合は、安全管理規定に違反していると言えるのではないかと思われます。


まとめにかえて

コロナ禍が徐々に明けようとしており、2022年のGWは3年ぶりの賑わいが予想されていました。

その矢先での悲痛な事故。

できるだけ詳しく調べ、今後類似の事故が起こらないように少しでもお役に立ちたいと思っていました。

しかし、海のことにはまったく門外漢な私が調べたものですから、間違いこそないと自負しておりますが、勘違いや見当違いなことを記載していないかとビクついております。

専門家の方がおられましたらどうぞご教示をお願い申し上げます。

参考資料

国土交通省・船舶安全管理認定書等交付規則

気象に関する警報・注意報発表基準(北海道)pdf

知床観光船、しけ予想の中で運航基準守らず出航強行か(読売新聞オンライン)

知床遊覧船事故、出航時30cmの波が4時間後3mに(東洋経済オンライン)

【時系列】強風・波浪注意報で海水温3度程度 冷たい北の海で起きた観光船不明 出航からの24時間(北海道テレビ)

【専門家解説】観光船事故は「人災」 読み誤った気象予測――現場は複雑な波…「海域の特性に慣れるまでのトレーニングあったか疑問」(日テレNEWS)

image photo:jacqueline macouによるPixabayからの画像

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